仙台高等裁判所 昭和24年(を)632号 判決 1950年3月31日
被告人
阿部五郞
主文
本件控訴を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人伊藤俊郞の控訴趣意第二点について。
原判決は判示事実認定の証拠として警察及び檢察庁における各関係人の供述調書を挙示していること及び右書類についての証拠調は証拠書類としての取調方式によつてなされたことは所論のとおりである。よつて斯る書類は証拠書類に該当するか、はたまた書面の意味が証拠となる証拠物に該当するかについて按ずるに当裁判所は記録を精査するに、該書類は当該事件について作成された報告文書であつて檢察官が原審公判延で証拠として提出する前予め相手方に対し閲覽の機会を與え相手方はこの機会を利用して作成の眞否を調査したであらうことを推認しうる相手方はその結果該文書の成立の眞正なことを確認して各書面を証拠とすることに同意し証拠決定について何等の異議がなかつたことを窺知しえられるのであるから、原審が該書類を証拠書類と解し朗読の方式に從つて取調をしたのは洵に相当であると認める。